Karma Police
初めて警察署に行きました。赤いレンガで造られた階段を上り寂れた自動扉を開けて、警察署に入っていったのです。地方の警察署ということもあってか、意外とこじんまりとしていまして区役所とあまり変わりのない感じでした。ただ警察官達は、区役所の役員とは違う空気を発していました、まるで話し掛けられるのを拒むような。
窓口にいた警察官に要件を告げると、金銭を要求してきました。僕は国家権力に楯突く根性なんて持ち合わせていませんので、すぐに財布を取り出し要求された金銭を出しました。それから次に証明写真を要求されまして、きっちりとサイズを合わせてカットしていた写真を出しました。最後に書類に名前と電話番号を書かなければいけないらしく、窓口を離れて記帳台にて必要条項を記入、それから再び窓口に行ったならば、そこには先程の警察官とは別の人が座っていました。
記入しました、と告げますとなにやら記入事項を確認しているのか、云々呟いておりました。それから何かが足りないみたいなことを呟き始めました。千円足りないじゃない、千円足りないじゃない、と繰り返し呟いていました。先程幾ら払いましたか、なんて言ってくるものだから、言われた額を払いましたと言いましたところ、少し足りないみたい、そこにある曲がり角を曲がったところにある会計係で千円の証紙を買って来い、と。思うところはありましたが、実は先程払っていた額では通知表に記載されていた額より千円少ないと思っていましたので、素直に会計係に向かったのです。
会計係に向かう途中に、暴力団追放と墨汁で書かれた木の看板が立てかけてあるのが見えました。そしてその看板の立てかけられた横の部屋を何気に見ると、コントなどで出てきそうな暴力団の事務所のようなインテリアの部屋がありました、狙い過ぎ。会計係ではパチンコの景品交換所のように、一言の会話も交わすことなく、僕が千円を差し出すと千円分の証紙が返ってきました。
千円分の証紙を持って窓口に戻りまして、その証紙を窓口に渡して終わりだろうなと思っていましたら、この写真は使えません、これのカットしていない写真を持っていないか、なんて言っています。通知表にあった通りにカットしてきたんですが、と返事しましたら、胸がもっと写っているほうが良いかもしれない、私がここでこの写真でもいいですよと言っても免許を交付するのは私ではないからね、など言うのです。これが国家公務員の責任転嫁か、などと思いましたけれども、仕方がないのでその足で近くにある証明写真を撮影してくれるところまで行ったのです。
これでやっと普通自動車免許の更新が終わると思ったら、それではまた一ヵ月後に二時間の講習会がありますので必ず来てください、と。軽くなった財布を鞄に入れて、寂れた自動扉を開けて、赤いレンガで造られた階段を下り、自転車で帰ったのです、自転車で。
|